9割の世帯が加入する死亡保険(生命保険)は本当に必要か?
「生命保険って、どうしても加入しなくてはいけないもの?」
「独身なんだから、死亡保険なんて入らなくてもいいのでは?」
こういった素朴な疑問をお客様から投げかけられることがよくあります。
もちろん、民間保険には加入の義務はなく、「誰でも絶対に入らなくてはならない」というわけではありません。
しかし、多くの方が「必要だ」と考えていらっしゃるからこそ、90%近くの世帯が死亡保険(生命保険)に加入されているのです。
10%の世帯は死亡保険(生命保険)に加入しておられないわけですし、確かに一定の条件が整っている場合は保険に加入する必要を感じないかもしれません。
そこで、「こういう場合には死亡保険(生命保険)が必要だと思われるのでは?」といった具体的なケースを紹介しながら、死亡保険(生命保険)がどのような場合への備えになるのかを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
【目次】
1. 死亡保険(生命保険)とは何のための備えか
※1-1 死亡保険(生命保険)の背景と原則
※1-2 死亡保険の必要性とは
※1-3 金融資産としての死亡保険
2. 死亡保険が必要な場合とは?
※2-1 子育て世代の方へ
※2-2 高齢のご両親がいらっしゃる方へ
※2-3 リタイア目前、あるいはリタイア後の方へ
※2-4 独身の方へ
まとめ:大半の方にとっては、やはり死亡保険は必要
【解説】
1. 死亡保険(生命保険)とは何のための備えか
1-1 死亡保険(生命保険)の背景と原則
本題に入る前に、少しだけ用語の説明をさせていただきます。
冒頭から「死亡保険(生命保険)」という書き方をしていますが、「生命保険」という言葉には、「人の生命・健康などのリスクに備えるさまざまな保険」という意味があり、狭義では死亡保険と同じ意味で使われます。
ここでは混乱を避けるため、以降は狭義の生命保険は「死亡保険」という語に統一し、「生命保険」という場合は広義の生命保険を指すこととします。
生命保険の始まりは、中世ヨーロッパだといわれています。
その当時、商人たちは自分たちの権利を守るため、同業者ごとに「ギルド」という同業者組合を組織していました。このギルドで、組合員同士の冠婚葬祭費用などの相互扶助を目的として生命保険の原型がつくられたといいます。
今日のような近代的な保険制度の元祖となったのは17世紀のイギリスで、牧師たちの間で生まれた制度でした。
これは自分たちに万一のことがあった際に遺族に生活資金を支払うために、保険料を出し合うというものでした。
しかし、長期にわたって安定した保険金を支払うためには、統計や数学(保険数理学)に基づき、「一定の保険金を支払うために、どれくらいの保険料が適正か?」を計算する必要があります。
この保険数理学に大きく貢献したのは、「ハレー彗星」にその名を残す数学者、エドモンド・ハレーでした。
ハレーがつくった生命表(各年齢の死亡率や平均余命などを関数化した表)の概念は、今日も生命保険の設計などに用いられている生命表に受け継がれています。
1762年には、イギリスで世界初の生命保険会社が設立されました。後に福沢諭吉が欧米の近代的保険制度を日本に紹介し、日本でも1881(明治14)年に国内初の生命保険会社が設立されています。
生命保険の原則は、「大勢の保険契約者が保険料を負担し、それを財源として、誰かが死亡したときや病気になったときに、保険金や給付金を受け取ることができる」というもので、相互扶助すなわち助け合いという考え方に基づいています。
1-2 死亡保険の必要性とは
一般論として、死亡保険とは「世帯・家族の大黒柱に万一のことがあった場合、残された家族がこれから生活していくための原資として保険金を受け取り、生活に困窮することがないように」備えるためのものです。
葬儀費用も必要になってくるでしょうし、子どもが小さい場合にはひとり立ちできるまでの生活費に加えて学資も必要でしょう。
そのためには、かなりまとまった額のお金が必要になります。
また死亡保険は、被保険者が死亡した際だけでなく、高度障害によって働けなくなった際にも保険金が支払われます。
これによって医療費や介護費をまかなうという考え方もあります。
もちろん、それをまかなえるだけの十分な貯蓄や資産をお持ちの方であれば、死亡保険に加入する必要はないかもしれません。
また、いざというときは親戚や近しい人あるいは勤務先などから十分な支援が受けられるというような場合にも、死亡保険は不要かもしれません。
しかし、10年・20年という長い歳月のうちには、いろいろな状況の変化も考えられます。
死亡リスクは誰にでもあるものですから、万が一の場合への備えは可能な限り多様な形に分散しておくべきでしょう。
そのなかのひとつの方法として、死亡保険はかなり確実性の高い備えではないかと思われます。
1-3 金融資産としての死亡保険
死亡保険の第一の目的は「万が一の場合への備え」ですが、それとは別に保険を金融資産と考え、資産運用のひとつの方法と考えることもできます。
近年は日本の長期金利が下がり続けており、2016年1月には日銀がマイナス金利導入を決定しました。
さすがに私たちの預貯金の金利がマイナスになるわけではありませんが、バブル期の1990年前後には定期預金の金利は6%にも達し、普通預金でも2%の金利がついていました。
そのことを考えると、約30年後の現在の金利は「あってないようなもの」としか言いようがありません。
これに対し、たとえば終身保険であれば、契約から一定の年数が経過したのちに解約すれば、定期預金よりも有利な金利が期待できます(あくまでも現時点での相場の話であり、また、保険商品によって予定利率が異なるため、これは一般論としてご理解ください)。
もちろん、加入者に万一のことがあった場合は、保険期間中いつでも死亡保険金・高度障害保険金が支払われます。
利殖のための手段としては、保険よりハイリスク・ハイリターンの金融商品はいくらでもあります。
しかし、資産をいろいろな金融商品に分散して確実に運用する上で、保険商品のように堅実性の高いものを投資先のひとつとして選んでおくことは重要ではないでしょうか。
なお、死亡保険金は、一定の金額までが相続時においては非課税(控除)となり、税額が軽減される制度があります。このため、相続の際の税負担の軽減を目的として生命保険に加入するという方もいらっしゃいます。
2. 死亡保険が必要な場合とは?
2-1 子育て世代の方へ
子育て世代の家庭はご夫婦ともまだ若く、十分な貯蓄も準備できていない場合が多いのではないでしょうか。
もちろん貯蓄は大切です。
しかし十分な額の貯蓄ができる前に、大黒柱に万一のことがあったらどうなってしまうのでしょうか。
下図は、生命保険文化センターが4,000近くの一般世帯を対象に行った調査結果をまとめた「平成30年度生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉」に掲載された資料です。
この資料によれば、世帯主に万一のことがあった場合、残された家族が必要と考える生活資金の平均は、世帯年収の9.2年分に相当する5,558万円となっています。
共働きの、あるいはお子さんが成長して働くようになった世帯では、世帯主以外の収入もそれなりにあると考えられます。
しかし、それを差し引いたとしても、数千万円単位の貯蓄を持っておられる世帯は限られているのではないでしょうか。
特にお子さんがまだ小さく、お母さんもフルタイムで働くことが難しいような場合は、死亡保険による備えが非常に重要となってくるでしょう。
2-2 高齢のご両親がいらっしゃる方へ
子育て期が一段落するのは、そろそろ熟年に差しかかる頃ではないでしょうか。ご両親も高齢になってきて、経済的にいろいろと支えが必要になってきます。
「もし自分に万一のことがあったら、妻や子はなんとかなるにしても、自分を頼っている両親が経済的に困るのでは?」という心配をされる方も多いでしょう。
もちろん、この頃にはある程度の貯蓄はできていらっしゃる方が大半とは思います。しかし学資など、なにかと物入りが多かった時代を経て、「まだ貯蓄だけで安心というわけにはいかない」という実感をお持ちの方も少なくないでしょう。
これからは、ご自分やご夫婦の老後資金を蓄える必要もあります。貯蓄と保障を兼ねる形で、終身保険や養老保険などを検討してみるという手もあると思われます。
すでに死亡保険に加入なさっている方も、保険の主たる目的がお子さんからご両親へと移行することで、保険の見直しを行うべきかもしれません。
また、ご両親のために新たに死亡保険への加入を検討するという方もおられるでしょう。ご両親に安心して長生きしていただくためにも、保険による備えの重要性は高いといえるのではないでしょうか。
2-3 リタイア目前、あるいはリタイア後の方へ
リタイアを目前にして、あるいはリタイア後に死亡保険への加入を検討する方も少なくありません。
もちろん、この年代ではかなりの割合の方がすでになんらかの保険に加入しておられると思われますが、「葬儀費用など、自分が死んだあとの経済的負担を子供にかけたくない」という方が多く、そのために、従来加入している保険を見直して、一時払い終身保険や養老保険への加入を検討するケースも多くみられます。
ちなみに、葬儀にかかる費用の平均は約180万円と言われています。そのおおよその内訳は、葬儀一式費用が約120万円、通夜からの飲食費が約30万円、返礼品が約30万円となっています。
ざっと200万円程度の備えが必要となるわけですが、「貯蓄のなかで常にこれだけの金額を確保しておくよりは、死亡保険金が200万円程度の小口の終身保険に加入しておいたほうが安心」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、リタイア時にまとまった額の退職金を受け取る方が多いと思いますが、退職金の運用先として生命保険商品を検討してみるのもいいのではないでしょうか。
一時払い終身保険は、最初の時点で払い込みが終了するため、一定期間解約せずに保険会社に預けておけば、解約時の解約返戻金が払込保険料を上回ります。保険商品にもよりますが、数年後には同額のお金を定期預金に預けたよりも元利合計が多くなる可能性が高いでしょう。
2-4 独身の方へ
「自分は独身なので、万一のことがあっても保険金の受取人がいない。医療保険は自分のために必要だが、死亡保険は結婚するまで関係ない」
そういう考え方の若い人が増えてきています。
事実、生命保険文化センターの「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、29歳以下の生命保険の世帯加入率は79.2%と、全年齢層の世帯加入率である88.7%に比べて低いことがわかっています。
また、同調査での生活保障の準備状況は「世帯主の病気やケガの治療や入院した場合の医療費の準備」が第1位(52.2%…複数回答)であるのに対し、「世帯主が万一の場合の資金準備」は第2位(48.6%)となっています。
これを見ても、死亡保険より医療保険を重視・優先させる人が増えてきていることがわかります。
もちろん、限られた収入のなかから生命保険に加入するのであれば、目下のところ受取人がいない死亡保険よりも医療保険を優先させるというのは、もっともな考え方です。
しかし、それは決して「死亡保険が不要」ということにはつながりません。
世帯加入率を見ても、確かに29歳以下は低いものの、30代になると加入率は一気に80%後半にまで上昇するのです。つまり、これから10年のうちに多くの世帯が一気に生命保険に加入する計算になります。
ちなみに生命保険には一般的に、「契約時の年齢が若ければ若いほど保険料が安い」という特徴があります。
終身保険の場合、若いうちに加入して保険料を抑えておけば、中途解約しない限り生涯保険料は上昇しません。
「いまのところ結婚の予定はないが、いい人が見つかったら家庭を持ちたい」とお考えなのであれば、結婚を待ってから保険に加入するより、保険料が安いうちに死亡保険にも加入しておくことで月々の保険料負担を小さくすることができます。
また死亡保険と医療保険を別々に検討するのではなく、死亡保険を柱として、そこに医療保険特約などを付加するという形でもケガや病気のリスクに備えることができます。
情報収集しますと必要なのかなぁと思いますが、皆さんは…